2025年の直木賞ノミネート作品について書いております。
前も書きましたが、受賞作以外の作品も落選の一言で終わらせるには
あまりにももったいない!
そう思って、全5作品の魅力について発信しております。
※ネタバレはありませんのでご安心を。
ご紹介する五作目は
女王様の電話番(渡辺優著)です!

あらすじ
この作品ね、あらすじでどこまで話していいものか難しいんですけれど。
まず、主人公は20代の女性ですが、色々ありまして新卒で入った会社を辞めて、現在アルバイトをしています。そのバイトの内容が、いわゆるSMサービスを提供する性風俗店の電話受付です。ですから、タイトルが「女王様の電話番」なんですね。
風俗店を舞台としてはいますが、内容は健全ですのでご安心ください。
その電話番をやっている主人公なんですけれど、彼女には大きな悩みがあって、それが自分の性についてです。
性について疑問を持つきっかけとなった彼女の過去の出来事は何かというのも一つの読みどころではあるんですが、物語全体としては、いわゆる性的マイノリティをテーマとした作品ですね。
その悩める主人公が、SM女王様や電話番の同僚等とのやりとりを続けながら、自身の性どう向き合っていくのかと言った物語になっています。
感想
いやーこれ面白かった!
性的マイノリティにフォーカスを当てた作品ということで、今回の直木賞候補作の中では最も現代的なテーマ且つ読みやすい作品であったなという感想です。
特徴としては、何より文章全体がコミカルですね。砕けた口調での会話シーンも多いですし、登場人物も20代の若者が多いので、ノリも全体的に軽い。ふっと気を抜くことができるシーンが多くて、肩の力を抜いて読むことができるんですよね。
あとは、主人公が性風俗店の裏方として勤務しているので、その職場ならではの小ネタというか、裏側事情をちょくちょく挟んでくるのも単純に面白いです。卑猥なシーンなく描かれているので、女性の方でも嫌悪感なく楽しめるかなと思います。
この作品で僕が一番素晴らしいと思った点は、主人公のキャラクター性なんですよ。好きとか嫌いとかじゃなくて、物語を面白くしてくれるキャラという点で素晴らしいと思います。
僕個人的には、この作品の様に、人間の「性」にフォーカスを当てた作品結構好きなんですよ。
女性同士の恋愛を描いた、綿谷りささんの『生のみ生のままで』とか、結婚直前に婚約者が盗撮で捕まってしまう、一穂ミチさんの『恋とか愛とかやさしさなら』とか、恋愛関係ではない男女にフォーカスを当てているという点では、凪良ゆうさんの『流浪の月』とかも近いと思います。
どれも名作なんですけれど、こう言った性的マイノリティであったり、他人同士では決して分かり合えない性の問題を扱った作品って、どうしても全体的に重たくて、読んでいて苦しくなることが多いんですよね。それだけ重たいテーマなので当然と言えば当然なんですけれど。
ただ、この作品はそのような重たさを極限まで軽くしてくれています。その最大の要因が、さっき言った主人公のキャラクター性にあると思います。
この主人公も、もちろん自分の性自認について相当に悩んでいます。その点は先に話した作品の人物とも同様なんですが、決定的に違う点は、しっかりと自分の意見を主張できるところなんですよ。
とても印象に残ったシーンがあるのでご紹介させていただきます。
主人公とその友達が会話するシーンがあるんですけれど。そこで、主人公がちょっと酷い言葉を投げかけられるんですよ。そこでこの作品の主人公は、その酷い言葉を言われた時に「よっしゃきたか、戦いの始まりだ。絶対言い負かしてやるぞ!」みたいなことを思うんですよ。
これまで僕が読んできた、性的マイノリティに悩む人物って、無責任な周りの言葉に惑わされて、葛藤して、それでも自分なりの答えを掴んでいく、っていう人物だったんですよ。しかしこの作品の主人公は、直情的な人物なんですよね。
自分の中であれこれ考える前に、とりあえず相手にムカついたから言い返す、みたいな感じで。理屈で考えるより、自分が直感的に「好き」「嫌い」と感じたことを優先して行動するような性格なんですよ。だからこの主人公、他のシーンでもめちゃくちゃ行動力があります。
それが読んでいてとても心地が良いと言いますか。読者が言ってほしいこと、やってほしいことをしっかり体現してくれるという、読んでいて安心感があるんですよね。
性の多様性という、重たすぎるテーマをしっかりと問題提起しながら、最初から最後まで不思議とユーモラスな雰囲気を纏った名作だと思います。
単純に作品としても面白く、しかも読みやすくもあります。
現代的なテーマを扱った作品を読みたい方、性の多様性に少しでも興味がある方はぜひ読んでみてください。


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