2025年の直木賞ノミネート作品について書いております。
前も書きましたが、受賞作以外の作品も落選の一言で終わらせるには
あまりにももったいない!
そう思って、全5作品の魅力について発信しております。
※ネタバレはありませんのでご安心を。
ご紹介する三作目は
神都の証人(大門剛明著)です!
あらすじ
時系列的には、昭和18年の戦時中からスタートする作品でして、ジャンルとしてはリーガルサスペンスとなります。
ざっくり言ってしまうと、ある一人の弁護士が死刑判決を受けた男の冤罪を晴らすといった物語ですね。
本作の舞台である戦時中は、今でいう警察の力がものすごく強くて、司法制度も全く整備されていないので、いわゆる検察側のやりたい放題。弁護士なんて碌でもないやつみたいな扱いを受けております。
そんな四面楚歌の中、この主人公は自分自身が犯罪者となる覚悟で、ある強硬手段に打って出るんですね。それで状況が好転するかと思いきや、それはまだ長い戦いの始まりに過ぎないんですよね。
昭和から令和にかけて繰り広げられる弁護士と検事の戦い、そして被害者家族をはじめとした、事件に関わった人物の人間模様、最終的に真犯人は誰なのかと言ったミステリー的な要素までふんだんに取り入れた、読み応え抜群の一冊となっています。
感想
感想を一言で言いますと、この小説「壮絶」でした。
まずは戦時下の司法制度についてですが、これがとにかく酷くて、被害者遺族のことを思うと読んでいてめちゃくちゃ辛くなるんですよね。
もちろん、それと戦う主人公ら弁護士に対して世間の扱いも酷いので、ちょっと平常心で読んでいくのは難しいですね。
僕はリーガルミステリーは個人的にとても好きなジャンルなんですけれど、昭和初期の司法制度については全く無知だったので、それを知れたというのはとても勉強になりました。
何より、冤罪を晴らすための戦いがこれほどに過酷なのかと。
そして僕が思うこの小説のいちばんの魅力ですけれど、とにかくこの本「熱い」んですよ。
これは、弾圧された環境でも被害者遺族に寄り添う弁護士たちの情熱に対する熱さももちろんなんですけれど、それ以上に、物語の展開がアツいんですよね。
この物語、昭和から令和にかけての話なので、時間で言うと80年くらいにも及ぶんですよ。なので、当然その過程で、志半ばで亡くなってしまう人物も出てくるんですよね。
その思いを、後に残された人物が継いでいくんですよ!
「あの時出てきたあの子がここで出てくるのか!」みたいな。それがね、展開としてめちゃめちゃアツいんですよね。
リーガルサスペンスなので、証拠や証人を探す過程ですとか、真犯人は誰なのかといったミステリー要素ももちろん読みどころではあるのですが、個人的にはこの小説は各登場人物が抱える「信念」ですとか「矜持」と言った感情を汲み取っていく作品かなと思いました。
この小説ね、決して読みやすいとは言いません。単純なページ数で言っても、他の候補作と比べても最もボリュームある小説ですし、扱っているテーマも冤罪ですので読んでいて苦しくなるシーンも多々あります。
でも、読み始めたら多分、途中で辞められる人は少ないと思います。それは、もちろん単純に物語が面白いとか、語り手が定期的に変わっていくといったテクニカルな要素もあると思うんですが、一番はやはり登場人物たちの情熱に感化されるからかなと思います。
あとは時代が移り変わっていくにつれて、司法制度が整備されていく過程とかもみて取れますので、それも個人的には面白かったですね。ただ、現代に程近い状況になっても尚、冤罪を晴らすのはこれほどまでに難しいのかと言ったもどかしさもとても感じましたね。
ニュースで、何十年もかけて冤罪が証明されましたとか、たまに見かけますけれど、そこに至るまでにどれだけの戦いがあったのかとか、被害者遺族の思いを想像したりとか、多分今後見る目は大きく変わると思います。
重厚なサスペンスに触れてみたい方、リーガルミステリがお好きな方などは、ぜひ読んでみてください。


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