今回ご紹介する小説は、朝井リョウさんの「イン・ザ・メガチャーチ」
こちらの小説のテーマはズバリ「推し活」です。
現代日本で当たり前のように根付いた、この「推し活」という文化。
貴方ははその闇の部分について考えたことがあるでしょうか
身を滅ぼすほどの金額を注ぎ込んでしまう人や、激しい依存症になってしまう人がいることも、また事実です。
しかしその人たち自身は、むしろそれを心から喜んでいる。
果たして彼らは、幸せな人なんでしょうか、不幸な人と呼んでも良いのででしょうか。
そして、これほどまでに人を熱狂させる「推し」のメカニズムとは何なのか。
ネタバレはありませんのでご安心ください
あらすじ
主な登場人物は3人です
① 47歳会社員の男性
離婚して娘が一人います。
彼はひょんなことからあるアイドルグループをプロデュースすることに・・
② 19歳の女子大生
自分の性格や周りとのギャップに悩む内向的な性格。
そんな中で、あるアイドルと出会い、猛烈にのめり込んでいき・・
③ 35歳の独身女性
舞台俳優の熱狂的なファンですが、ある報道で状況が一変していき・・
こんな感じで「推し活」を仕掛ける人
これからハマっていく人
既にハマっている人
という3つの視点から、「推し活」経済の中身を徹底的に掘り下げていく。
そのような作品になっております。
1つのテーマに対して、異なる人物の目線から語ることで、そのテーマをより立体的に描くというのは、朝井さんは本当にお上手です。
魅力1 ニッチなテーマなのにどんな読者でも引き込まれる
この小説のテーマが推し活だと聞いて、率直にどう思いましたか?
僕は正直、最初は「興味ないかも」って思いました🙇
自分自身が「推し活」をしたことがなくて、何となく若い人の文化だと思っていたからです。
それだけ現代的で、しかもニッチなテーマなので、本来であれば好き嫌いが人によって凄く分かれるはずなんですよ。
でもこの小説凄いのが、読む人を選ばないんです。
理由なはぜか
僕は3人の主人公にあると思いました。
この人物たち、年齢も性別も三者三様で全く違います。
彼らは違う人生を歩んでいるんですけれど、それぞれが抱えている悩みや葛藤というものの中身がとんでもなく作り込まれているんですよね。
だから、嫌でも誰かと自分を重ね合わせて、肩入れしたくなってしまう。
そしてまた上手いのが
彼らの人生の中に「推し」という言葉が出てくるのがとても自然で違和感がないんですよね。
「推し活」という本来は読み手を選びそうなテーマをこれだけ大衆向けに昇華した点は
本当に素晴らしいと思いました。
魅力2 心を抉られるパワーワードの数々
これは朝井リョウさんならではと言っていいでしょう!
心を抉られるような言葉、たくさん出てきます。
人生で、気付いてはいるんだけど目を逸らしている部分や、人から触れられたくない部分。
耳を塞ぎたくなってしまう。
それに対して、芯を食った言葉を真正面から投げつけてきます。
冒頭のシーンだけご紹介させてもらいます🙏
主人公の1人である、47歳のバツイチ男性が部屋にいるシーンから物語は始まります。
彼は別居中の娘とリモートで通話をしています。しかし、、、
どうも会話が続かない。普通の雑談ができない。
そんな気まずい空気の中、リモート通話は終了します。
暗い部屋で彼は考えます「どうして自分と家族は離れ離れになってしまったのか」
彼はこう思います。
これちなみに、小説の1行目です
「人生とは、これまでやってきたことが還ってくると思っていた。(中略)
ただ、これからは違うのかもしれない。今後還ってくるのは、これまでやってきたことではなく、これまでやってこなかったことの方かもしれない。」
勉強でも仕事でも「将来のために何かをやる」そんな経験は誰しもあると思います。
では皆さん
「やらなかったこと」「やってこなかったこと」
これらについて考えたことはありますか?
この主人公は、結婚中に家庭内で生産性のある行動をとらなかったことや、若い人とのコミュニケーションを積極的に取ってこなかったことを例に挙げています。
小説の頭からこの文章ですからね。
本当に朝井さんは鋭い視点を持っているなと思います。
帯にも
「神がいないこの国で人を操るには、物語を使うのが一番いい」とか
帯裏には
「中毒症状がある方が苦しくないのだ、人生は」
と言った興味をそそられる文章が書かれています。
皆さんにもブッ刺さる言葉が、きっとこの本にはたくさん出てきます。
魅力3 解けない問題を出されたかのような読後感
この小説、推し活文化に対して色々な人物の意見が出てくるのですが言動や考え方が結構極端なんですよ。
推しにのめり込むにしてもやりすぎだろ、と思う行動を取る人物も多いですし、それによって日常が不幸になる人もいます。
ただ凄いのが、あくまで作品全体からは
「推し活文化」に対する嫌悪感を全く感じないんですよ。
理由としては
推し活の是非について、物語全体を通して非常にフェアに意見が出されているからだと思います。
例えば、あるシーンで「推し活文化にはこういった良い面があります」とテレビで誰かが話しています。
それが非常に分かり易いので、読者はとても納得するわけです。「なるほど!」と。
でも次のページでそのテレビに対して
「この考えって全く的外れだよね」という意見とその理由が語られます。
色々な考え方が書かれているのですけれど、基本的には全部正しいんですよ。
ただ極端なだけで(笑)
「推し活」の良い面と悪い面を鮮明に問題提起し、それに対する鋭い意見をこれでもかと突きつけておきながら、作者の考え方を押し付けてこない。
後は自分で考えろと。僕はそう受け取りました。
読み終わった後はまさに放心状態。
朝井りょうさんの小説は当たり前の価値観がぶち壊されることが多いですが、この小説も例外ではなかったです。
少なくとも僕は一生、本気で推し活する人を笑うことはできないと思います。
最後に
以上です!
一応僕の考えとしては、「推し」にのめり込める人って、羨ましいなと思いました。
人生の空白の時間をどう過ごすか、みたいな話も中に出てくるんですけれど、自分自身のことを考えると、登場人物が「推し活」に熱中している以上に有意義なことに時間を使えているだろうかとも思いました。
視野を狭めて熱中できることがあるって、意外と羨ましいものです。
ご覧いただきありがとうございました!


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