2025年の直木賞ノミネート作品について書いております。
前も書きましたが、受賞作以外の作品も落選の一言で終わらせるには
あまりにももったいない!
そう思って、全5作品の魅力について発信しております。
※ネタバレはありませんのでご安心を。
ご紹介する二作目は
白鷺立つ(住田祐著)です!
あらすじ
こちらは、江戸時代を舞台とし、僧侶を主人公とした歴史小説になります。
この作品をご紹介するにあたってまず一番にご紹介しなければいけないのが
「千日回峰行」についてです。
お坊さんって、色々と修行をするイメージがあると思うのですが、その中でも最も過酷とされているのが、この千日回峰行という名の修行です。
詳しい内容を説明すると長くなってしまうので、この修行の一番やばいところだけご紹介するんですけれど、それが終盤で発生する「堂入り」というイベントです。
これがとんでもなく、とりあえず9日間「断水」「断食」「不眠」「不臥(ふが)」を強制されます。その上で、9日間毎日、何十キロもある山道を呪文を唱えながら歩き回ると言った内容です。もう意⭐︎味⭐︎不⭐︎明。
しかもこちらの修行、途中リタイアができません。万一リタイアした場合は自ら命を断たなけれないけないというルールまであります。なんでこんなことするのか常人には理解できない領域ですね。
この千日回峰行を成し遂げようとする僧侶にスポットを当てた、ヒューマンドラマ的な話となっております。
感想
僕はこの本を開いて第一印象で「うわ、読みにくそう」と思ってしまいました(笑)。
そもそも歴史小説を普段あまり読まない上に、仏教的な世界観の物語なので、聞いたことない言葉や見たことない漢字が初っ端からめちゃくちゃ出てくるんですよね。命懸けの修行がテーマという点も、非常に重たい話だろうなと予想して読み始めました。
ただ、読んでびっくり、その予想を良い意味で裏切ってくれました。この本は一気読み小説です!めちゃくちゃ面白かったです。
この本の一番凄いところは、とにかく物語のスピード感だと思いました。
単純に読みやすくて面白い本と言ったら他にも無数に思い浮かぶのですが、この小説に関しては、江戸後期の歴史的背景、難解な仏教用語、僧侶の価値観といった一般的に理解するのに時間がかかる要素をふんだんに含んでいるにも関わらず、その世界に読者を一瞬で溶け込ませてくれるんですよ。そして、最後まで物語のスピード感が全く落ちないんですよね。
その素晴らしい要因をいくつか紹介させていただくのですけれど、まずは冒頭ですよね。
みなさん、この小説がどのように進んでいくと思いますか?
僕は、千日回峰行という過酷な修行に挑むまでの葛藤や周囲とのやりとりを経て、終盤で満を持して修行に出かけていって、果たして達成できるのか、そんなストーリーを想像していました。ジャンルは全く違うのですけれど、スポ根的なな進め方じゃないかと。
それがですよ、この小説は冒頭ですでに千日回峰行達成間近のシーンから始まるんですよ。9日間飲まず食わず、不眠不休で過ごした僧侶の描写の迫力と、いきなりクライマックスと言った緊張感もあって、とんでもない引力で物語の世界に連れていかれるんですよね。
もちろんそのシーンの終わり方も、しっかり気になる要素を残して次の章に繋がるので、もうここまで来たら作者の術中にしっかりハマっている感じがします。
あと、こちらも凄いと思った点なんですけれど、この小説、章が変わっても場面や時系列が変わることは一度もないです。章の終盤で毎回次が気になるような終わり方をして、次の章ではその続きであるクライマックスシーンから始まる形を取っています。
イメージとしては1章目が「起→承→転」で始まって、次の章は「結→起→承→転」で終わるような感じですかね。それが永遠に続いていって、気づいたら読み終わっていると。
この小説の様に、とっつきにくい分野を舞台とする作品ってどうしても「読みにくさが出る」っていうウィークポイントが出てきてしまうと思うんですよ。いくら終盤が面白かったとしても、そこに辿り着くまでに読んでいて疲れてしまうというか。
それをですね、この作品は見事に払拭してくれています。本当素晴らしい。
作品の内容にも触れておきますと、、
僕が面白いと思ったのは、僧侶の人間性の描き方ですね。
寺を舞台としているので、当然いろいろな僧侶が出てきます。僧侶のイメージというと、禁欲とか質素とか、そういったイメージが僕は浮かぶのですが、この小説に描かれている僧侶は実に俗人的な人が多いです。
欲望を完全に無くすことはできないですし、何より人間が持っている感情というのはこれほど厄介なものなのかと、どんなに立派な人物でも捨てきれないものだと思わされましたね。
時代も職業も違っても、根っこの部分は同じ人間なのだという描き方をすることで、彼らの言動に対して読者も共感できる。この点も、物語に浸りやすくしてくれている要因だと思います。
以上になります!ジャンルとしては歴史小説というよりヒューマンドラマかなと思います。日常とは一風変わった世界観に触れてみたい、重厚だけど読みやすい小説が読みたいという方は、ぜひ読んでみてください!


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